【2016年の終わりに】もう後ろは振り返らずに、これからおとずれる未来の話をしたい

あるとき、電車の中で何気なく流し読みしていたcakesの記事のうえで、スクロールする指がハタと止まりました。

いまいち脈絡のない話が延々と続くのは普通の老人と変わりなかった。ただひとつ、決定的に違う点があった。過去の話が一切なく、すべて未来の話だったのだ。

その一節に、わたしはものすごく大きな衝撃を受けました。ショックというか、深い感銘というか……なぜならその“老人”が、ただ者ではなかったから。

1969年、アメリカの「アポロ計画」。人類の歴史上はじめて、月面に到達した人物。その老人の名前は、バズ・オルドリンというそうです。

小野雅裕 / 宇宙人生——NASAで働く日本人技術者の挑戦(※cakes有料記事)

――【第7回】歴史的偉人との遭遇  https://cakes.mu/posts/8394

タイトルの通り、この記事はNASAで働く日本人技術者、小野雅裕さんの連載コラムです。この「歴史的偉人との遭遇」の回は、小野さんが、レセプションに参加していた85歳のバズ・オルドリンと、ひょんなことから短いドライブをともにしたときのことを記したものです。

彼はもう85歳だ。彼の夢が実現するのは、おそらく彼の死後だろう。にもかかわらず、彼はレゴで未来の乗り物を作って遊ぶ子供のように豊かな想像力を持っていた。

(中略)

当の本人は全く意に介さず、相変わらずのしかめ面で窓の外に見える発射台を凝視していた。彼は過去にそこから自分が飛び立った日のことを思い出していたのだろうか。それとも、未来にそこから飛び立つロケットの姿を思い描いていたのだろうか。きっと後者だったと思う。

「かっこいいな」と、心の底から思いました。これだけの偉業をなしとげた人なのだから、過去の栄光の中で生きることだってできたはずなのに。自ら達成したことは、もうとうに過ぎさってしまった話。興味があるのは、これから先の未来がどうなるのか。それだけ。そんな生き方、すてきすぎます。

たかだか数年、数十年生きただけで、人は「昔語り」の囲いから抜けられなくなる。そんなケースが多いような気がしています。「自分たちの時代はこうだった」「今までこうだったから、キミたちもそうあるべき」――ただの昔語りが、周囲の人をがんじがらめに縛っている場面、今年もよくみかけました。

この記事を読んで反省したのは、なんとなく自分の中にも、そんな予兆がわずかに生まれていたような気がしたから。ちょうど社会人になって10年がたち、20代の頃にほしくてほしくてたまらなくて、でも全然手が届かなかったものを、それなりに手にした今だからこそ。

堂々と提示できる仕事の実績、成果。ようやく身についたスキル。とぎれなく仕事をいただける毎日。「だれかライターさんに」ではなく、「ぜひ大島さんに」とご相談いただく案件。ともに同じゴールを目指して走るクライアントのみなさん。愚痴を言い合うばかりじゃない、前向きで建設的な会話ができる仲間。

今年の秋頃に「ああしあわせだな」「わたしはずっとこれがほしかったんだよな」と素直に思った瞬間があって、これまでの10年にあったことをばばばーっと思い出し、すごく泣けてきてしまったんですよね。

……でも、だからといって。

立ち止まっている場合ではないんです。

今年1年のあいだに、「で、次はどうすんの? こっちにくるの? こないの?」と、はるか先の方からわたしを手まねきする、新たな課題が見えるようになったから。

 

そんなことをぐるぐる考えていたこの年末、ふと、いつも折りにふれて読み返してきた石井ゆかりさんの「年報 2016年ver」を、改めてじっくり読みました。そしてまた、しみじみ泣いた。来年もがんばります。

貴方は今、長い長い階段を
時間をかけてずっと一人でのぼってきたところです。
もう数段先に、
目指していた場所が見えています。
このままのぼっていけば、そのまま
その場所にたどり着くでしょう。
これまで階段をのぼりながらずっと
心の中で、目指し続けていた場所です。
ここまでのぼってきてしまったら、もはや
「どう進めばいいか、わからない」
というようなことはありません。
少なくとも、その場所にたどり着いてしまうまでは
一本道です。

たしかに、そんな1年だった気がします。いろいろ寄り道もしたし、人に迷惑をかけたりもしたけれど、「どこに進むか」は、もう迷うことはなく、ようやく根拠のある自信を持つことができたというか。

雲がわたあめのようなものではない
とわかった状態で、
さらに、夢見た雲を目指していくのです。
月にうさぎがいなくとも
火星に火星人がいなくとも
人間は、その場所に憧れ、行ってみようとします。
そこではもう、かつてのふわふわした夢は大きく変化して、
「目指したものの中に、本当に入ってゆく」
という、新しくもリアルな興奮や歓喜に包まれるのです。

2016年 おひつじ座の空模様。より

 

“目指したものの中に本当に入る”ことができたのは、この10年間、そして今年お世話になった、たくさんのみなさんのおかげです。こころから、感謝しています。

だからこそ、感傷にひたって昔語りをするのは、今年で終わりにしよう。次どうするか、これから何をするか。未来のことと、向き合っていきたいと思います。